Monday, January 16, 2017

苦悩に満ちた顔で亡くなる

40代Tさんという男性患者さんのことも、忘れられません。がんが全身に転移し、食事も自力では食べられなくなり、いよいよ最期のときが近づいていました。・・体調が急変し、ゆっくりと絞り出すような声で私にこう言ったのです。

「・・今まで好き勝手に生きてきたツケが回ってきたんだ。俺の人生はいったい何だったんだ?・・」

・・Tさんが今までどんな人生を歩んできたのか詳しいことは知りませんが、なにかを悔いていることだけは伝わってきました。その日の深夜、Tさんは目をカッと見開いたまま亡くなりました。その顔は苦悩に満ちたTさんの生涯を物語るような険しいものでした。

中下大樹『悲しむ力』